緑の侵略者が腐るころ
秋の雨が長く続いている。
金木犀の香りが好きなのに、花は雨に散らされている。
晴れていたならもっとあの香りの寿命は長いはずなのにな、と思いながらも、秋の雨の後の湿潤な空気があるからこそ、金木犀の香りもいいものに感じるのかもしれないと、考えはすぐに揺れる。
小学生の頃、夏休みの宿題は全然終わらせられなかった。
宿題が終わらないまま新学期を迎えるのは、あの頃の私からしたらこの世の終わりがくるんじゃないかってほどに怖いことで、怖いなら宿題をやればいいのに、やらないままに夏休みは終わった。
そして四季の中で一番好きな秋が来る。
恐ろしい夏が終わって、静かな秋が来る。
秋は憂鬱でいることを許してくれるような気がする。
人気のない田舎の家の周りでは、緑の侵略者も去って、虫や獣の気配も薄くなって、暖かな季節よりも一層、田舎のさみしさが強くなる。
寒くて、乾燥した空気の中で吸う煙草は美味しい。
ひとりでいることが許される気がする。